たびたび投稿していますが、僕は10年ほど前から、仕事の合間に友人宅の農業を手伝っています。
最初は果樹園の剪定作業とか収穫作業とか草刈りとかの力仕事しか出来なかったのですが、少しずつ野菜の育て方なども教わってきまして、数年前からは畑の一部を間借りして、ちょっと広めの家庭菜園を楽しむようにもなりました。
実は僕、昨年夏に12年続けたフリーランスを廃業しまして、現在は某企業のWeb職として働いているため、基本的には週末農業、というか週イチ農業となってしまっているのですが・・・なぜか転職前より今の方が畑に行く回数が増えていますし、日頃から農業関係の情報をきちんと調べるようになりました。
フリーランスの頃の方がはるかに時間の自由があったのですが、その分、農作業は気ままなお遊びに終わっていたのでしょう。規則正しい生活をすると、趣味にもメリハリが出てくるものだなと実感します。
閑話休題。そんなこんなで、いままでは割と感覚的に作物を植えてきたのですが、今年からは素人なりに計画を立てて、土作りから収穫まで、きちんとメモを残すことにしました。今後はブログにも投稿していこうと思っています。
まずは第一弾として、5月下旬に収穫を終えた春ジャガイモの記録をまとめてみました。
今年(2016年)はインカのめざめ、メークイン、キタアカリを栽培しました。黒マルチフィルムを使った早期植え付けで、病害虫に悩まされることもなく、最後まで無農薬でしたが、かなり良い収穫量となりました。
あくまで我流&手抜き農法ですし、作物の育て方には正解があるようでないのが実際のところですので、この通りにやってもうまくいかないかもしれませんが、どうぞ何かのご参考に。
種芋の入手(1月下旬)
種芋はホームセンターでも普通に買えますが、黒マルチを使った栽培で早い時期に植えようとすると、店頭に並ぶ時期が微妙に合いません。とはいえ、農協や種苗店でないと買えないような量もいらないので、今年は楽天の通販で購入しました。
内訳は、
の計6kg。
まともに育つと最低でも50kg、下手をすると100kgを超える収穫量となるので、少しやってしまった感は否めませんが・・・とりあえず育ててから考えることにします。
なお、食用として売っているジャガイモは、人間には影響のないものの、ジャガイモ自体の育ちを悪くする病気に罹っている場合が多いので、種芋には向きません。
まあ、秋作は春に採れたイモを種芋に使う人も少なくないですし、僕もそうしていますけど、何年も種芋更新をしないというのはさすがに無理。それで収量が保てるなら、農家の人はわざわざ種芋を買いません。
何より、せっかく植えたのに育たないのはガッカリ感が非常に大きいので、食べ残したジャガイモを試しに庭やプランターで育ててみるような場合を除けば、我々のような個人の趣味レベルでも種芋を買って育てた方が良いです。
土作り(2月上旬)
ジャガイモは連作を嫌うので、昨年・一昨年と休耕して“雑草畑”となっていた部分を使用しました。面積にして7m×10mといったところ。軽く苦土石灰を蒔いて、植え付け1週間前までに耕耘機で深さ15cm程度耕しておきます。耕耘機が無い場合は高さ15cm、幅70cm程度、畝と畝の中心幅1.5m程度で畝を作りましょう。
なお、ジャガイモは酸性土壌を好み、PH6.0を越えるとそうか病が出やすくなります。家庭菜園で定番の苦土石灰は、マグネシウムの補給だけでなく、勝手に酸性に傾く日本の畑では重要な中和資材ですが、ジャガイモの場合は蒔きすぎてもいけません。今回、土壌酸度計で畑のPHを測ってみたところ、PH6.5以上の場所が多かったので、表面がうっすら白くなる程度にとどめておきました。
余談ですが、最近通販で送料込み1000円くらいの土壌酸度/水分/照度計がよく売られていますが、少なくとも酸度計としては役に立たないので手を出さないようにしましょう。
僕は安さにつられて二つ買ってみましたが、一個一個数値はバラバラ。試しに水質チェック用のPHメーターで様々な値のクエン酸溶液を作って測定してみたところ、メーターのメモリ上でのPH値の1段階と、実際のPH値1の違いが連動すらしないものでした(写真前側2個)。2000円も出せば日本のメーカーのまともな酸度計が買えますので、とにかくケチらないことです(写真後側)。
種芋植え付け・元肥(初日:2月21日)
1.5m間隔で深さ10cm程度の溝を掘り、大体40cm間隔で種芋を並べました。普通は株間20cm程度らしいです。
種芋は100gを基準に、それより小さいものは1個丸ごと使用。それより大きいものは半分に切り、切り口に木草灰をまぶしてから使用しました。
個数としては、
- インカの目覚め・・・3畝45個
- メークイン・・・2畝30個
- キタアカリ・・・2畝30個
程度の植え付けです。
切り口を下にした方が良いとか、上向きの方が良いとか色々言われますが、今回は切り口を横にして並べました。
また、この時点での芽出し芽掻きについても色々言われますが、今回は単に「面倒」だったのでしていません。どうせ発芽はしますし、多すぎる芽は後で間引くことになりますので。
元肥として、化成肥料8-8-8をひと株当たり一握り程度。酸性度の調整目的で硫酸カリをやはりひと株当たり一握り程度。種芋間を中心に蒔いて良くかき混ぜ、覆土しました。予算の関係で堆肥などの有機肥料はケチります。その分、後で追肥を多めにやることにします。
マルチがけ(初日:2月21日)
種芋に覆土したあとに、じょうろで軽く水を蒔いた上で、幅90cmの黒マルチをかけてやりました。
黒マルチには以下のような素晴らしい効果があります。
- 土壌を温め保温もするので、気温が氷点下に落ちたり霜が降りたりしないかぎり、2月3月の気温が低い時期でも成長を維持できる。早めに成長させておくことで、害虫が大量発生する前に収穫を終えることができる。
- ジャガイモは種芋よりも上にイモが付くため、普通に植えると後から土寄せをしないと日光でイモが青くなり食べられなくなるが、遮光性の黒マルチを使うことで、面倒な土寄せが不要になる。
- 雨が土に直接当たらないので、いつまでも土がフカフカしていて、イモを収穫しやすい。雨が降った後でもOK。
- 雨で肥料の水溶成分が流れないので化成肥料でも長く効く。
- 適度な保湿効果。よほど日照りが続かない限り乾燥させ過ぎることはありません。
- とにかく雑草対策として最強。
- インカの目覚め・・・2kg→35kg
- メークイン・・・1kg→25kg
- キタアカリ・・・3kg→40kg
- 十分に休ませた畑を使ったこと
- 株間を広めにとったこと
- 酸度を考えて施肥を工夫したこと
- 肥料を多めにやったこと
- 芽欠き効果
- 黒マルチによる様々な効果
- 幸運にもアブラムシの発生が全く無かったこと
収穫後はゴミ(特に農家の方の場合は産業廃棄物)になってしまうのが難点ですが、剥がすとき上手に扱えば、2枚重ね、3枚重ねなどで後作に転用する事も可能です。
発芽・マルチ破り(35日目:3月26日)
3月下旬になると芽が地上部に達し、マルチのあちこちにツンとつっぱったところが出てきます。そのままにしておくと太陽の熱で芽が焼けてしまうので、見つけ次第マルチを破いて芽を外に出してやります。
今年は週末しか畑に行けなかったことから、破くのが遅れて芽を少し痛めてしまいましたが、なんとかその後に影響を出さずに済みました。
芽欠き・追肥(50日目:4月10日)
茎が大体15cm程度になった時点で、多すぎる芽を間引いてやります。今回は1株3本立てにしました。間引いたあとにマルチの隙間から、化成肥料8-8-8をひと株当たり半握りほど追肥してやりました。
芽欠きの是非には諸説ありますが、芽欠きをしたほうが大きいいもが多く採れるのは確かです。やり方にもいろいろありますが、僕は面倒なのでハサミで根本から切る方法にしています。
開花・除草(70日目:4月30日)
4月中旬にインカのめざめからつぼみがつきはじめ、4月下旬には各品種とも花が咲きました。いつも4月植えだと開花は5月中下旬となり、そのころにはアブラムシの被害に遭ってスミチオンなどでの消毒が必要になるのですが、今年は早めに植えたおかげか何もせずに済みました。
この頃になると畝間の雑草が伸びてきます。毎週畑に行くたびに、鍬を使って表面を軽く掻くように除草してやりました。大分気温も高くなり、中々しんどい作業ではありますが、畝間だけで済むのも黒マルチのおかげ。本当に助かります。
収穫(98日目:5月28日)
5月下旬にはインカのめざめは大分枯れてきて、メークイン・キタアカリも茎が弱々しくなってきたので、梅雨入り前に収穫を開始。茎を切って、マルチをはがして、あとはひたすら掘るだけ。地上部にできていたイモも黒マルチの遮光効果のおかげで青くならず食べられる状態でした。
成果としては、食べられないほど小さな芋を除いて、
6kgの種芋から100kgもの収穫となりました。下の写真でさえ全体量の1/3ほど。
ジャガイモは1kgの種芋から10~20倍が一般的な収量らしいので、まずまずといったところでしょう。
他のふたつと比べ、キタアカリの収量がそれほど伸びませんでしたが、これは種芋の切り分けを横着して30個程度しか植えなかったのが原因。ひと株あたりの収量は1kgを超えているので、むしろ奇跡的な好成績とも言えます。
メークインとキタアカリは、大粒のものが大量で、捨てる見極めが難しくなるほど。スーパーで小イモとして売られているサイズ(短径4cm程度)のものを勿体なくもずいぶん捨ててしまったと思います。
小さいイモしか採れないと言われるインカのめざめも、大半は直径7cm以上の中・大粒となり、握り拳大のものも少なくありませんでした。
分析と展望
今回の勝因としては、
などが挙げられるでしょうが、同じようにやったとしてもうまくいかないのが畑作の難しいところ。特に今年は、有機肥料をケチって全く使用していないことから、“運”にもかなり助けられているはずなので、来年は来年なりの工夫をしていきたいと思います。
また、種芋6kgというのは、正直なところ個人としては植えすぎでした。100kgもの収穫でも、売れるほどの量ではないので、友人知人に送りまくったのですが、宅配便の送料が結構な額になってしまい・・・来年は多くても1/3程度の植え付けにするつもりです。
そして、今年はじめてインカのめざめをまともに作付けしてみたのですが(昨年も数株植えてみたものの病気にかかって惨敗)、これがまあ実に甘くて濃厚な味。煮ても、揚げても、ポテトサラダにしても、コロッケにしても、とにかく美味しい。秋にも一畝植え付けしてみようと思っていますし、来年からはインカ一本でも良いかなと思っています。
その後の畑
ジャガイモの収穫跡地には、すぐに畝を立て、黒マルチを2枚重ねで再利用して、6月上旬からサツマイモの栽培を開始しています。
5月一杯でジャガイモの収穫を終えられたので、植え付け適期にサツマイモを植えることができました。黒マルチ様々です。
サツマイモはあまり肥料をやってはいけない作物なので、肥料の残効が気になるところですが、こちらも秋に収穫を終えたところで、また、ご報告したいと思います。